2019-07-02から1日間の記事一覧

山椒魚 2/2

続きになります。 私が今回紹介している『山椒魚』は、新潮文庫さんから出版されている短編集です。この中で、表題以外にも面白かった作品があったので、紹介させていただきます。 六番目に収録されている作品『シグレ島叙景』。このお話が大変面白く印象に…

山椒魚 1/2

今回は私の好きな文豪の一人、井伏鱒二の紹介です。代表作『山椒魚』を取り上げていきましょう。 もともと手に取ったきっかけは、ゲームキャラクターとして井伏先生が実装され、知らない作家さんだけど読んでみようと購入したのでした。 小さい頃からの本好…

桜の実の熟する時 2/2

続きになります。 さすが文豪というだけあって、やはり描写の繊細さは異常なほどです。消化中の私のメモより、「描写はしっかり安定しているのに桜の花びら一枚の落ち方が少しでも違うだけで全てが崩れてしまいそう」。緻密に計算されたかのように繊細で、緻…

桜の実の熟する時 1/2

今回の表題は島崎藤村の著作です。1919年1月に書き上げ、出版された長編小説です。 島崎先生は自然主義文学に代表されるように、ドラマチックな展開や突飛な仕掛けは一切描かず、私たちが過ごしている今と同じような日常を事細かに描写されます。 まず私が読…

牧水の恋 2/2

続きになります。 不倫をしていた小枝子、不倫だとも知らない若山先生。小枝子が何かを隠していることは先生も何となく分かっていたようで、歌や手紙に端々が見えます。 歌もそうですが、友人に宛てた手紙の内容もなかなか人柄が出ていて面白いです。小枝子…

牧水の恋 1/2

牧水は宮崎を代表する詩人・若山牧水です。自然と酒を愛しそれにちなんだ短歌を数多く残しています。そんな彼の人生を作り上げたともいえる、情熱的な恋にフォーカスして、牧水の意志を継ぐ現代の歌人・俵万智さんが本書を書き上げられました。 牧水を調べる…

赤い蝋燭と人魚 2/2

続きになります。 人魚が絵付けをしたろうそくは大盛況で、幸せになった彼らですが、ここから物語は下り坂を転がり落ちてゆきます。 夫婦はある時香具師に、「その人魚を売ってくれ」と申し出られるのです。推測ですが、文脈からして見世物小屋でしょう。そ…

赤い蝋燭と人魚 1/2

日本のアンデルセンとの異名を持つ、小川未明の童話集に収録されている作品であり、彼の代表作とも言える物語です。独特の切なさを帯びた大好きなこの作品について紹介します。 舞台は寒い北の海です。そこに住むひとりの人魚がこれから生まれてくる我が子を…